睡眠時無呼吸症候群について

~本当に内服薬だけで十分なのか?~


睡眠時無呼吸がいろいろな病気の原因になっています!

 

睡眠時無呼吸は、毎晩寝ている間に何百回も呼吸が止まる病気です。

高血圧になる原因の一つなのに、血圧の薬による治療のみで終わっている人をよく見かけます。
睡眠時無呼吸が怖いのは、たとえ血圧の薬を飲んでいても、血圧の変動(急に上がったり、日々・時間帯によって高かったり)が十分におさえられず、その結果、動脈硬化が進行していくことです。※1

 睡眠時無呼吸の人は、脳梗塞、心筋梗塞、腎硬化症を起こしやすいことが分かっています。

 

さらに、睡眠時無呼吸は動脈硬化疾患以外に癌、認知症、糖尿病、高尿酸血症、高脂血症、不整脈、逆流性食道炎、うつ病、等、様々な疾患との関連が報告されています。
からだを癒す睡眠時に、呼吸が繰り返し止まることとの戦いがいろいろな病気を引き起こすのです。

 

睡眠時無呼吸を疑う人は?

 

外見
 小あご、咽頭が狭い、扁桃腺・舌の肥大、肥満。
睡眠中の症状
 いびきをかく。上向きで寝られない。
 夢をよく見る。寝た気がしない。
 睡眠中、毎日決まった時間にトイレに行く。
 足がよくつる。
起きている時の症状
 朝起きた時に頭痛、肩こり、からだのだるさがある。
 よく動悸(不整脈)がある。
 胸焼けがよくある。
 昼間眠たい。特に運転中や食後にふと眠くなる。
血圧の薬を飲んでいても
 起床時、夕食前、冬の血圧がなかなか下がらない。
 家での血圧は低いが外来や動いた後にすぐに血圧が上昇する。
 1日・日々の血圧の変動が激しい。
血液検査
 尿酸値、脂質、糖質の値が高い。
家族歴
 親が睡眠時無呼吸である。

 

※1:当院で高血圧の治療を行っている患者様で、起床時血圧と動脈硬化の関係を解析しました。その結果、当然ながら2週間の平均した血圧が高い人ほど動脈硬化は進んでいましたが、たとえ平均血圧が135mm以下であっても、日間変動係数が高い(日々の血圧の変動が大きい)と動脈硬化が相関して進んでいました。つまり降圧剤で血圧を下げていても、毎日の血圧が日々大きく変動するようであれば動脈硬化が進んでいくことが示されました。
血圧を変動させるのは交感神経の亢進(車で言うアクセルを踏むこと)の関与ですが、夜間に大きく交感神経亢進状態を引き起こす睡眠時無呼吸に以前から注目してきました。
当院の追加の解析で、睡眠時無呼吸が起床時や外来での血圧変動を引き起こし、動脈硬化の進展に関係していることが分かりました。特に無呼吸の回数と無呼吸時の酸素低下率が動脈硬化進展と相関していました。

以上の結果から、睡眠時無呼吸は頻回の無呼吸や低酸素を介して夜間に交感神経を過剰に高め、昼夜の血圧変動を起こし、その結果動脈硬化を進めていくと推測されます。動脈硬化疾患予防のためには高血圧の薬に加え、睡眠時無呼吸の治療が必要であると言えるのです。
また、高血圧の人に睡眠時無呼吸を合併する比率は、約30~60%といわれています。治療抵抗性高血圧患者の83%が睡眠時無呼吸という報告もあります。高血圧の人はまず睡眠時無呼吸を疑う必要があるのです。